書きかけの記事をようやく更新です

朝晩冷えるようになって参りました。
寒くなってくると灯油の注文が増えるので冬場は忙しくなりますが、ありがたい事です。
今日は少し専門的な話題を。
先日、危険物取扱者免状の保安講習会がありまして、最近の事故事例や法改正など学習して参りました。
事故事例では記憶に新しい昨年8月に京都で起きました花火大会でのガソリン携行缶爆発事故。
死者3名、負傷者56名を出す大事故火災に至りました。
全身に火傷を負った小学生のお子さんが数日後亡くなり、大変痛ましい事故だったのを覚えています。
その反面事故を起こした露天商にほんの少しでも危険物の知識があれば、到底起こりえない事故だったのではないかと思います。
最近ではスタンドもセルフSSが増えており、消費者自らが給油するなどガソリンに対する危険意識というか、取扱いに対する抵抗のようなものも以前と比べ大分薄らいでいるのではないかと感じます。
とりわけ今回の講習会では、静電気の怖さが目立つ映像がいくつも流されました。
当店ではガソリンは扱っておりませんが車の給油にSSを利用するので静電気をあなどっちゃいけないなと改めて思いました。
ここからが本題。地下タンクについて
普段皆様のご家庭へ配送している灯油。
タンクローリーというタンクを乗せた車で各家庭へと配送されているかと思います。
そのローリー車の大きさも大小様々あります。ちなみに当店のタンク容量は430Lです。
当然車載タンクの容量だけではお客様の件数分ありませんので、スタンドや当店のような一般取扱所には敷地内に大容量のタンクが備えてあります。当店のタンク容量は10000L(10Kタンク)
稀に地上設置式もあるそうですが、ほとんどが地下埋設されています。
この地下埋設タンクが経年と共に老朽化が進み危険物の漏えい事故が報告されるようになり、漏えい事故防止対策を定めた改正消防省令が施工されました。
穴が開いた地下タンク(テキストより)
概要としては
地下タンク設置年月の経過年数とタンク工事を行った時の設置状況によって、今後漏えいする恐れがあるタンクを3段階に振り分けて該当するランクに合わせて適切な措置を講じなさいとの事。
要するに、適切な措置をしなければ地下タンクの使用を認めないという事です。
当店のタンクも2013年時点で設置後40年。適切な措置をしなければなりませんでした。
老朽化対策工事は3つ
・FRPライニング工事
・電気防食工事
・常時監視措置
このうち電気防食工事と常時監視措置はあくまで現状維持が基本的な考え方で、この工事を行っても漏えいが確認された時点で即アウトになってしまうので選択肢から外しました。
それに対してFRP工事はタンク内面を洗浄してFRPシートで内部をコーティングするもので、漏えい対策としてはこれ以外ないのではとFRP工事を選択しました。
ただし、タンク内に人が入って作業するので油を抜き取る作業や作業者出入り口のマンホール設置など上記の工事で一番費用も工期もかかる大掛かりな工事でした。(しかもスタンドではないので補助金は受けられず

)
冬の繁忙期を避けてFRP工事を着工したのは昨年の5月。
石油でお世話になっている問屋さんの紹介で、工事実績、価格共に一番良さそうな業者さんに依頼をしました。
面白いもので、見積もりを出してもらうのに何社か現地調査を依頼したのですが、業界では有名な某メーカーの現地調査が一番適当で見積もりの内訳も他社と比較して数十万円も高い(笑)
今回工事を依頼した業者さんが一番最後に調査に来たのですが、その調査の細かさを見て某大手の調査がいかに適当で見積もりも適当なのかがはっきりとしました。
当店のような小さな個人商店でなくとも、数百万単位の設備投資ともなれば適当に業者を選択するわけにはいかないので、安心してお願い出来る業者さんに巡り合えてホント良かったと思います。
話はそれましたが、ゴールデンウィーク明けの5月に工事開始という事で、2週間の工事期間中地下タンクは使えません。
定期配送のお客さんに滞りなく配達するために予定を調整し、地下タンク内の油を全て抜き取る作業からスタートしました。
・マンホール設置の為の掘削
・タンク内部調査とサンドブラスト清掃
・FRPライニング工事
・完成検査
2週間の工程中ほぼ毎日2~3人体制で工事の方が来てくれて、酸素濃度の測定器を使いながら交代で地下タンク内部の作業をしていました。
主任の方も工事の進捗具合に合わせて消防との調整や届出など色々動き回ってくれました。
大きなトラブルもなく無事地下タンクの修繕も終え、工事終了後には届出書類や工事写真などを一冊のファイルにしていただき、作業時の内部写真などを見ることが出来ました。
余程地下タンク設置時にいい工事をしたのか、40年の歳月を経た割に内部の劣化はほとんど見られなかったそうです

消防法の改正で初めて地下タンクの漏えい措置を聞いた時には
金が出せなければ燃料を販売するなという悪法だと思いましたが、やはり基準を決めない事には漏えい事故を防ぐ事が出来ないだろうと今は納得です。
当店のように特段異常が見られないケースも多いでしょうが、こればかりはタンク内部を開けて見ないと分からないし、なにより東日本大震災の影響も考えられたのでこの漏えい措置はやって良かったと思います!
と言うより前述している通り、やらなければ地下タンクを使用出来ないのでやって当然ですが、市内の販売店では地下タンクを廃止する所も多いようでした。
その背景には灯油の需要が今後も下向して行くであろう事と、採算面で地下タンクは廃止して問屋までローリー車で取りに行けばいいという考えの店が多かったそうです。
当店も廃止するか当然悩みました。が、やはり決め手となったのが東日本大震災です。
あの震災後、流通に与えた影響は大きく灯油に関しても次の入荷のメドが立たないので在庫を慎重に管理するよう問屋さんから通達が来たのを覚えています。
震災後普段行列など見たことのないガソリンスタンドまでが給油の列で道路を塞ぐ異常事態が市内各所で見られました。
当店の場合は灯油でしたが一度も取引したことのないお客さんからの問い合わせや来店が相次ぎ販売したい気持ちはやまやまだけれども、普段取引させていただいているお客さんの分を確保しなければならない為丁重にお断りしました。
「ポリ一本くらい」とか
「もったいぶりやがって!」なんて言われたりもしました

そもそもこーゆーお客さんは平時には必ず買わなくなるのは目に見えていたので最初から販売は出来ないなと思う一方で、普段買っていただいてるお客さんの分の在庫を切らしてしまう事が一番の心配でした。
震災後こんな話をあるお客さんが言っていたのを思い出します。
「○○商店にいつもガソリンを給油しに行っていたのに、震災の時に行列に並ばされた挙句売り切れで販売してもらえなかった。
いつも利用してない客に販売しておいて普段の付き合いはなんだったのか。もうあそこには買に行かない。」
まさにこう思われるのが一番怖かったのです。
どの業種でもそうですが、現在は流通の発達や大型店の進出など買い物をするのにもいろんな選択肢があると思います。
灯油に関しても同じで、今ではホームセンターでさえ客寄せの商品として扱う店が多くなりました。
この時期になると、「おいおい、そんなに積んで大丈夫かよ~

」と思うくらい普通車で買いに来ている人をよく見かけます。
ちなみにホームセンターの販売価格はほとんど利益は無いと思います。
現金払いでお客さんが買いに来る事とホームセンターに来てもらう事が目的なのでほぼ原価に近い価格だと思います。
この価格を基準にされると当店のような販売店の配送価格は高いと思われてしまうのかも知れません

自分で買いに行く人が増えた中それでもウチから買ってくれる。
そんなお客さんには大変感謝していますし、信頼を裏切るようなことは絶対出来ないと思っています。
災害は誰にも予測出来ませんし、その災害に寄って起こる不測の事態はもっと予測する事が難しいと思います。
急に流通がストップしてしまった時、在庫がない状態でどう販売していくのか考えた時。やはり地下タンク廃止=灯油の販売を辞める事と同じだと思いました。
少々長くなりましたが、昨年行った地下タンクの工事と併せて震災から得た教訓と当店の販売方針について書かせて頂きました。
震災時に灯油やガソリンを販売してもらえなかったなんて経験のある方。
もしかしたら普段はホームセンターやセルフのスタンドに行ったりしていませんか?
それが悪いわけじゃありません。
でも、多くの方が安い所、安い所と目指して行けばウチのような店は淘汰され、安売りの店だけになってしまいます。
その安売りの店に多くの人が殺到し流通がストップした時。。。。震災時に見た光景となるわけです。
ホームセンターなどの店頭小売価格と同じには到底できませんが、こちらは配送までしてもそんなに価格差があるわけではありません。
また、給油の際にタンク回りに異常がないかなどの点検もしています。
意外と自分で買いに行って得した気分の方は他で浪費しているものです(笑)
考えは方は人それぞれなのでこれくらいにしておいて、普段の付き合いの大切さと、販売する側が思っている事を書かせていただきました。